どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

理事長エッセイ 敗血症からの甦り 第3章「生と死の狭間」

ベットの上で

部屋では手の甲から 点滴(てんてき)で抗生剤を送り込み、胸には心電図の端子(たんし)が4個、指先には心拍数、血中酸素の計測キャップを貼り付け、顔には酸素マスク。
膀胱(ぼうこう)には排尿のためのパイプが差し込まれ、便所にもいけないオシメスタイル。
この状況で腰の痛みに対しての対応策は、3種類。痛み止めの錠剤は毎食後に3錠飲むがこんなものでは効きはしない。
座薬を挿入するも看護師の、いきなりズブリの仕打ちに()の薬が必要となる。
一番効果があるといわれた筋肉注射も6時間を空けねばならず
どうにもならない自分の身体に我慢は限界を超えた。

 

意識障害

自分のおかれた状況と、痛みからくる意識障害、錯乱(さくらん)がこのころから頭角を現し始めた。
マスクをした看護師がしゃべる言葉がどうも外国語に聞こえる。
どうも中近東あたりの研修生のようだ。(勝手に思い込んでいる)
部屋の中ではハリーポッターに出てくるディメンターが二人ばかり飛んでいるし、一人は部屋の(すみ)に座り込んでいる。
羽根までは注文しないが、せめて白衣(しらごろも)をまとった女性が微笑(ほほえ)んで手を差し伸べ迎えに来てくれたのであれば、多分「お迎えご苦労様です」と、ついてったと思うがディメンターについてはいけない。
「看護師さん、中庭に池があるでしょう。」
「その池の中に、イラク産のイクラから(かえ)ったイルカが泳いでいるはずだが、何頭いるか数えてくれませんか」
『楢崎さん、中庭には池はないし、イルカなんかいませんよ』
看護師がナースセンターでこの様子を話したらしく、主治医のM先生がとんできた。
『楢崎さん、何かイルカとかイクラの話を聞きましたが、冗談言われてるのですよね。本当にそのように思われているのですか?』
『状況によっては精神科の医師に来てもらうことになりますが。大丈夫ですか?』
「・・・・・・・・・・。」
これ以上ディメンターまで話をすると主治医が3人になってしまう。

モルヒネ

ここまで来ると主治医も内科の範疇(はんちゅう)では済まないことを判断して頂いたらしく、最終的に領域を超えて麻酔(ますい)科に相談され、モルヒネを入れた点滴を48時間行い、痛みを抑えてみましょうという話になった。
その報告をする先生が観音様に見えた。
このモルヒネは3日目からパッチ(モルヒネを塗布(とふ)したシール)となり3日おきに胸に張り替えることで痛みを抑えた。これは転院しても続いた。
このことにより次第に痛みは和らいできたが、身体を動かすことすら不自由なくらいベッドのあちらこちらで身体にくっ付けたコードが絡まっている。
夜中であろうと心拍数が50を下がると“ピィー”という機械音とともにナースセンターから看護師が駆けつける。
『どうしました?』
『大丈夫ですか、大きく深呼吸をして下さい』
『ハイ、大きく、ハー』『もう一度、ハー』
心房細動が自分の意思とは関係なしに心拍数を下げる。
結果、危篤(きとく)状況と判断した機械が音を発する。
音のたびに起こされて生死を判断され眠ることすら出来ない。
痛みにより眠れない日が続いていたので、夜間だけは音を出なくしてくれた。

次章は事件が…。
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