どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

理事長エッセイ 敗血症からの甦り 第7章「転院」

点滴の針が入らない

入院後1ヶ月近くなり数値が安定してくると転院を勧められた。
大学病院はすべて1ヶ月を目安に転院しなくてはならないシステムになっているそうだ。
そんな折、4〜5日で替える点滴の針が入らない事件が起きた。
12回述べ5人の看護師がチャレンジするも入らない。
朝食前、かれこれ1時間近くなってきた。
「少し休もうよ。誰かスパーンと入れてくれる“ヤリ手(ばあ)さん”みたいな人、居ないの?」
『うちには“(ばあ)さん”いません』
「ア、そ、・・・・。」
6人目が入ってきた。高級クラブのお姉さまみたいな雰囲気(ふんいき)を持った人だった。
黙って入ってくるなり手を持つと一発で入れてしまった。
思わず顔をジッと見て「お名前を」と言ったら、
『名乗るほどの者ではありません』
と返って来た。
イエイエいまの私どもには神に近い存在です。ぜひともお名前をと聞いた名前はいつの間にか忘れたが、顔はハッキリと記憶にある。
そういえば千手(せんじゅ)観音様に似ていた。

転院

その事件から2〜3日後、転院を予定していた病院の部屋が空いたとの連絡があり、急遽(きゅうきょ)転院を迎えた。
雨がシトシト降る中、天拝(てんぱい)山近くのK個人病院に車椅子のまま介護タクシーに乗り、約1時間ほどで到着した。
リクエストのウオシュレットが付いた個室である。
2月22日、入院から早くも1ヶ月が過ぎていた。
到着の日は雨も降っていたし、慌しかったが、翌日は朝から晴れていた。
大きな窓から差し込んでくる太陽の日差しを浴びたとき、日の光すら浴びることの無かった大学病院とは違う環境が急に目頭を熱くし(ほほ)()らした。
菅原道真公が祈願の際に登ったという天拝(てんぱい)山に手を合わせ、生きていることの現実と命を救っていただいた先生を含め、多くの方々に感謝の気持ちを込めて頭を()れた。
年をとったかなーと思う気持ちと、命の大切さ尊厳を感じた転院であった。

次章、舞台はK個人病院に移ります。
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