どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

どうぶつ村コラムVOL.19 ワクチンのお話し その2
 前回は病気を予防するためにワクチン注射を行い、またその働きや効果についてお話ししました。

 ワクチンで予防できるのは主にウイルス性の病気で、かかるとなかなか治らなかったり、短期間に死亡してしまうほど危険なものもあります。
 これらの病気はポツポツと散発的に発生しながらも、ときにある地域に大発生することがあります。大発生の「大」というのが、数頭なのかもっと大きな数なのかは置いといて、立て続けに来院が重なると病院はパニックになります。なにより命に関わるケースが多いだけに複数重なるとその治療が大変ですし、それと同時に他の病気やケガで来院している動物たちに感染してしまう恐れがあります。それが「院内感染」です。

 その防御には、徹底した消毒と取扱の管理が欠かせません。その対応には神経質にならざるを得ないため、飼主の方には不愉快な思いをさせてしまうことがあります。
 たとえば、待合室ではなく車の中で待機してもらったり、入院の面会をお断りしたり人数や時間を制限したり、またドアのノブや壁に触れないように注意していただくこともあります。お会計の際に、お金をビニール袋に入れたりすることもあります。
 それは他の患者さんにおつりとして渡さないためです。なんだかバイキン扱いされているような気になってしまうようで、確かにお気の毒な気がします。しかし、病気になった動物や飼主の方の着衣・靴や手には多量のウイルスが付着しているため、これはやむを得ません。ただこれは逆に、伝染病で弱っている動物にさらに他の病気を持って帰らないこということにもつながります。伝染性疾患の疑われる患者さんの治療の後は他の患者さんを多少待たせても、診察室内はもちろん待合室の床やイス、出入口に受付なども徹底した消毒を行います。その物々しさに、たまたま居合わせた方々は大抵驚きの声を上げるほどです。
 できる限りの感染防止は行いますが、病院ではその後当日の来院した動物たちがワクチン接種をしているかをチェックし、万が一の院内感染に備えてしばらくの間臨戦体制を整えておかなくてはなりません。実際その労力は大変なものです。不幸な感染を増やさないために、獣医師はワクチン接種をすすめているのです。もちろん、我々の負担を減らす意味もありますが。

 病院スタッフにとって困るのは、リード(引き綱)を付けてないイヌや抱っこしてネコを連れている飼主さんです。なかには待合室で自由に遊ばせたりしています。病院は病気の動物が集まるところですから、そのようなことは自ら感染リスクを高めてしまうので、病院にかかる際は必ずイヌはリードをつけて短く持ち、ネコはキャリーに入れ無用な接触は避けるべきです。普通に見える動物であっても、決して隣に座る方のペットに触れないようにしましょう。潜伏期の場合は、見た目で判断できませんから。このようなことをわかっていることを「知る」ワクチンといい、これもまた病気から身体を守る大事なワクチンです。


 
 
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